こんにちは。イエステーション佐賀店 株式会社ソロンの小出 貴彦(こいで たかひこ)です。
古家付きの土地を売りに出すとき、多くのお客様がまっ先に悩まれるのが「解体費用は売主と買主のどちらが支払うのだろう?」という点です。実は 法令で「必ず売主(または買主)が払う」と決められているわけではありません。しかし市場では「売主が実質的に負担する」ケースが依然として多数派です。
この負担区分を正しく理解していないと、
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想定外の出費で手取り額が目減りする
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買主との交渉が長引き、売却スピードが落ちる
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契約締結後にトラブルへ発展する
といったリスクを招きかねません。そこで本シリーズでは、解体費用の基本ルールから相場感、負担者をめぐる交渉術まで、売主さまが知っておきたいポイントを丁寧に解説していきます。
法律での明確な取り決めはなし─しかし実務では「売主負担」がスタンダード
法令に“誰が払うか”の規定はない
宅地建物取引業法や民法を見渡しても、「解体費用は売主(または買主)が負担する」といった条文は存在しません。つまり支払い主体は当事者間の合意で自由に決められるのが大前提です。
市場慣行:売主が実質的に負担するケースが多数派
実務では、売買契約書に “更地で引き渡す” 旨を定めることが多く、その場合は解体工事も売主の責任範囲として扱われます。また「古家付き土地」の名目で売り出しても、買主側は解体費用相当分を値引き交渉してくるため、結果的に売主がコストを負担したのと同じ効果になります。
慣習が根付いた背景
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資産価値の最大化:更地のほうが活用プランを描きやすく、買主の裾野が広がる
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融資審査の通りやすさ:建物がないほうが担保評価がシンプルになり、金融機関の審査がスムーズ
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交渉時間の短縮:費用負担の所在を明確にしておくと、価格交渉だけに集中できる
こうした理由から、売却をスムーズに進めたい売主ほど「まずは自分で解体しておく」という選択を取りやすいのです。
売主負担になりやすいパターン
「更地渡し」での売却
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契約で “建物を取り壊した状態で引き渡す” と定めると、解体工事は当然ながら売主の責任範囲になります。
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買主側は更地を前提に資金計画や建築プランを立てるため、引渡し後に追加コストが発生しません。
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金融機関の担保評価もシンプルになり、買主への融資が通りやすい点から“売主負担”が慣例化しています。
古家付き土地でも「実質的に売主が払う」ケース
表面上は買主負担でも、価格交渉で解体費用分を差し引かれる――結果として売主の手取りが減るパターンです。
よくある流れ | 売主への影響 |
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① 買主「土地だけに価値があるので、建物は要りません」 | |
② 解体見積 120万円 ⇒ その分を指値 | 売却価格 −120万円 |
③ 売主が解体を手配しなくても、実質負担したのと同じ手取りに | 手残り額が変わらない |
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買主が「リノベーションして使う」「当面は賃貸に回す」といった目的を持つ場合は、買主負担や折半も成立し得ますが、割合としては少数派です。
買主負担・折半が成立する具体的シチュエーション
買主が“自分のタイミングで壊したい”場合
リノベーション(既存建物を大幅改修して再利用)を想定して購入する買主は、
「まずは数年使ってから取り壊す」
「建物の一部だけ残して増改築する」
──といった独自プランを持っています。こうしたケースでは解体時期も方式も買主の裁量になるため、費用も買主側が引き受けることが多いです。
立地が希少で“どうしても欲しい”物件
駅近や商業エリア内など土地の希少性が極めて高い場合、買主は取得を優先するため「解体費用はこちらで払います」と提案してくることがあります。売主にとっては値引き交渉を回避しつつ早期契約につながる好機です。
“折半”という落としどころ
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売主 :手元資金が限られ負担を軽くしたい
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買主 :フルで負担するほどの余裕はないが、早く取得したい
このように双方の利害が拮抗したときは、50:50 での分担あるいは「上限○万円までは売主負担」といった定額負担で折り合うことが少なくありません。ポイントは、売買契約書に “誰が・いくらまで・いつ払うか” を明記しておくこと。後日の追加請求や工期遅延トラブルを防げます。
解体費用の相場とコストを抑えるコツ
構造別・おおまかな費用目安
建物構造 | 延床30坪の概算 | 備考 |
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木造 | 120〜150万円前後 | 人件費が比較的少なく、廃材が軽い |
鉄骨造 | 180〜210万円前後 | ボルト・梁の切断に重機が多用される |
RC(鉄筋コンクリート)造 | 180〜240万円前後 | コンクリート破砕&鉄筋分別が必要 |
金額はあくまで目安です。立地(重機の進入路・隣地との距離)や廃棄物の量、地域の人件費によって上下します。
見積りを取る前にできる“セルフ節約”
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残置物を自分で処分する
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家具や家電、可燃ゴミが多いほど業者の運搬・処分費が高くなるため、売主側で整理すると数万円単位で削減可能です。
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庭木・庭石の撤去を先行する
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小規模な庭木は手ノコやチェーンソーで伐採し、市の粗大ゴミ制度を利用すると安上がり。重機がスムーズに入れるため解体工期も短縮します。
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複数社に相見積りを依頼
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同一条件で3社程度に打診すれば、数十万円の差が出ることもあります。
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費用を“見える化”して買主との交渉材料に
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早い段階で概算を把握しておくと、
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「見積り120万円なので、売価はその分織り込んで○○万円で提示します」
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「買主が負担するなら指値はこのくらいまで」
と、金額を根拠づけた交渉が可能です。
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解体費用は譲渡費用として所得税計算で控除できるため、実質負担が目減りする場合も。こちらも数字で示せると説得力が上がります。
売主が自ら解体費用を負担する5つのメリット
メリット | 具体的な内容 | |
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① | 価格交渉がスムーズ | 「3,000万円で売却、解体費100万円は売主負担」と提示すれば、買主側は実質 2,900 万円で取得できるため納得感が高まり、指値(値引き要求)が抑えられます。 |
② | 早期売却につながる | 解体後の更地は「すぐ建てられる土地」として需要が広く、買主の検討スピードが上がります。結果として販促期間の短縮が期待できます。 |
③ | 譲渡所得税の軽減効果 | 解体費用は “譲渡費用” として損金算入できるため、譲渡所得が圧縮され、その分の所得税・住民税を節税できます。 |
④ | 地中埋設物などのリスクを事前に処理 | 売主自身が工事を管理することで、後から買主に発覚すると高額請求に発展し得る埋設管・廃材等を発見次第撤去できます。 |
⑤ | 買主の融資が通りやすい | 更地は担保評価がシンプルで金融機関の審査がスムーズ。買主のローン承認が出やすくなり、契約解除リスクを低減できます。 |
ポイント
“更地 + 解体費用売主負担” の条件は、
価格面 → 買主の心理的ハードルを下げ
税務面 → 売主の手取りを守り
法務面 → トラブル要因をあらかじめ排除
と三拍子そろって効果を発揮します。
トラブルを防ぐ!売買契約書に盛り込むべき5つのチェックポイント
チェック項目 | ここを明記しよう | 抜け漏れリスク |
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① 負担者 | 誰が解体費用を支払うか(売主・買主・折半など) | 「言った/言わない」で揉める |
② 金額または上限 | 見積書を添付するか、○○万円を上限にすると明文化 | 追加請求のトラブル |
③ 支払時期 | 決済時一括・着工前○日まで など具体的に | 工事着手が遅れる |
④ 工事範囲と方法 | 建物だけか庭木・外構も含むか/重機搬入経路 など | “残置物が残った” 等の紛争 |
⑤ 契約不適合責任との関係 | 地中埋設物やアスベスト発見時の責任をどうするか | 後から高額負担を求められる |
ワンポイント
解体工事は“瑕疵”ではなく“契約内容”として扱うのがベター。「負担者・額・範囲・時期」を条文化しておけば、引渡し後に「こんなはずでは…」という行き違いを防げます。
見積書を契約書に添付しておくメリット
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追加工事をめぐる費用膨張を防止
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買主が住宅ローンに組み込みやすく、資金繰りが安定
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将来の税務調査にも根拠資料として提出できる
地中埋設物・アスベストは「想定外」になりやすい
契約書に “想定外の事象が起きた場合の費用分担” を書き込んでおくと、売主・買主の双方が安心です。一般的には
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一定額までは売主が追加負担
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超過分は買主と協議
などの条項を設けるケースが多いです。
まとめ
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解体費用の負担は法律で固定されていない
└ 売買当事者が話し合い、契約で決めるのが原則です。 -
実務では「売主負担」が多数派
└ 更地渡しの慣習や価格交渉での値引きが背景にあります。 -
買主負担・折半も状況次第で成立
└ 買主がリノベ前提、あるいは希少立地で取得を優先するケースなど。 -
構造別の概算相場
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木造30坪:120〜150万円
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鉄骨造30坪:180〜210万円
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RC造30坪:180〜240万円
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費用を抑えるコツ
① 残置物を自分で処分する
② 庭木・庭石を先に片付ける
③ 3社以上で相見積もりを取る -
売主が負担する5大メリット
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価格交渉がまとまりやすい
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早期売却につながる
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譲渡所得税の節税効果
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地中埋設物リスクの事前処理
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買主の融資が通りやすい
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トラブル防止策は「契約書への明記」
└ 負担者・金額・支払時期・工事範囲・追加費用対応を具体的に書き込みましょう。
不動産売却をスムーズに進めるには、解体費用の負担と相場を正しく押さえ、契約で明確にしておくことが鍵です。
不安な点や具体的な費用シミュレーションは、ぜひ株式会社ソロンをご利用ください。
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