こんにちは。佐賀市・久留米市で不動産売却をサポートするソロンの平川です。
不動産の売却を検討中の方には、「未登記建物だと売却は難しいのだろうか…?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。
結論からいえば、未登記建物には通常の建物よりも売却しづらい理由があります。
そこで今回のコラムでは、未登記建物の売却が難しいといわれる理由を踏まえ、売却方法を解説します。
未登記を解消する登記の方法もご紹介しますので、ぜひあわせて参考にしてください。
未登記建物とは?
未登記建物とは、「登記簿に情報が登記(記録)されていない」あるいは、「登記簿上の情報と現在の状況が異なる」建物(家屋)を指します。
前者は、建物の「表題登記」や「所有権保存登記」をしていないケースです。
後者は、何らかの原因で起こった建物の現況の変化を登記簿に登記していない(情報を変更していない)場合を指します。
登記簿上の情報に変更を加える登記はいくつかありますが、未登記建物に関連深いのは「建物表題変更登記」と「相続登記」でしょう。
上記の登記の紹介もあわせて、建物が未登記になってしまう理由を解説しますね。
未登記になってしまうのはなぜか?
建物が未登記の状態になってしまう理由には、主に次の3つが考えられます。
- そもそも登記簿へ建物の登記がされていない
- 増改築などをした部分の変更が登記されていない
- 登記簿上の所有者が亡くなったあと「相続登記」がされていない
1つずつ解説します。
そもそも登記簿へ建物の登記がされていない
登記簿は「表題部」と「権利部」に分かれており、表題部には建物の所在や種類、構造など、物理的な情報が記載されます。
権利部は更に「甲区」と「乙区」に分けられ、甲区には所有権(所有者)に関する情報、乙区には抵当権など所有権以外の権利に関わる情報が記録されます。
通常は、建物を新築したらまず表題部へ「表題登記」し、どこの誰が所有する(取得した)建物なのか、所有者情報を「所有権保存登記」にて登記簿に登録する流れです。
表題登記は、建物が建ってから1カ月以内に行う定め(不動産登記法第47条)があります。
しかし、昔は現在のように住宅ローンを利用するのではなく、現金で購入する人も多かったため、融資を受ける際に設定する抵当権の出番がありませんでした。
登記費用もかかってしまうため、登記をしない人もいたようです。
また、昭和25年(1950年)の土地台帳法の改正を契機に、現在の表題部に当たる情報を記録していた「家屋台帳」が、現在の不動産登記簿に統合されました。
更新されるはずの情報に漏れがあったため、未登記建物となったケースもあるようです。
増改築などをした部分の変更が登記されていない
すでに表題登記を済ませていても、増改築や一部取り壊しなどをして床面積が変更になった場合は、増築工事完了後1カ月以内に「建物表題変更登記」を行わなければいけません(不動産登記法第51条)。
うっかり変更登記を忘れてしまうと未登記建物になってしまいます。
登記簿上の所有者が亡くなったあと「相続登記」がされていない
所有者が亡くなって相続した場合は、所有者から相続人へ所有権を変更する「相続登記」が必要ですが、登記を忘れると未登記状態になります。
これまで相続登記申請は任意でしたが、令和6年(2024年)4月1日から義務化が施行され、正当な理由なく違反した場合は、10万円以下の過料が科されることを知っておきましょう。
未登記建物は買い主のデメリットが大きく、売却しづらい
未登記建物の購入は買い主にとってデメリットが大きいため、未登記のままでは買い手が付きにくく、売りづらいといえます。
表題登記されていない場合は、登記簿そのものがないということ。
つまり、住宅ローンを借りたくても、融資を受ける上で必要な抵当権を設定できません。
ローンが組めないと現金一括で購入することになるため、買い手が見つかっても、資金不足により購入を断念するケースもあるでしょう。
また、売り主が所有権保存登記をしていなければ、買い主が売買代金の決済後に、売り主から買い主へと所有権を移す「所有権移転登記」を行えません。
登記ができない場合「所有者である」と公(第三者)に主張できないという不安感も、購入希望者を少なくする理由の一つといえます。
未登記建物の売却はできる?売却方法を確認
未登記建物の売却を禁じる法律はないため、未登記建物の売却自体は可能です。
未登記である旨をきちんと買い主に説明して、合意を得た上での売買取引であれば契約を結べます。
ただし、買い主のデメリットが大きいため、未登記のまま売却するのはおすすめしません。
先にお伝えした以外にも、購入後に速やかに登記手続きをしないと第三者名義で登記されてしまうリスクがありますし、そもそも登記の手間を避けたい買い手は多いでしょう。
また、購入後に買い主が登記を行って所有権を移転させないと、売り主に固定資産税の請求が届く恐れもあるので、買い主だけがデメリットを負うわけではない点にも注意が必要です。
未登記建物は登記してからの売却がベスト
未登記建物は、未登記状態を解消してから売却することをおすすめします。
未登記の情報を公の帳簿である登記簿に記載しておけば、先に挙げたデメリットなく、通常の売却活動が可能です。
登記には専門的な図面であったり、必要書類を揃える手間があったりします。
自分でも手続きは行えますが、表題部への登記なら土地家屋調査士、所有権移転登記や相続登記は司法書士といった専門家に依頼するとスムーズです。
ただし専門家の助けを得る場合は報酬費用がかかるため、どのくらいの料金がかかるのか見積もりを取って比較すると良いでしょう。
建物を解体すれば未登記状態を解消できる
建物を解体してしまうのも、未登記状態を解消する手段の一つです。
土地だけ(更地)にすれば、新築希望の買い手に需要が高く、スムーズに売れる期待があります。
更地にするメリットは「古家付き土地と更地渡しのメリット・デメリットは?売却交渉のコツもご紹介」にて詳しく解説していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
解体工事後には建物がなくなったことを証明する「滅失登記」が必要ですが、これは表題登記がなされていることが前提です。
建物の情報が未登記の場合は、解体後に管轄の市区町村役場に「家屋滅失届」を提出する点にご注意ください。
解体の費用相場は、30坪の住宅で120〜150万円ほど(坪単価約4〜5万円)です。
土地に居住用の建物が建っていると「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」が適用されますが(地方税法第349条の3の2)、取り壊すと適用外になります。
最大で6倍の税金支払いが発生する可能性もあるので、解体するのであれば、固定資産税が決まる1月1日を過ぎてからをおすすめします。
不動産会社に直接売却する方法も
不動産売却には、不動産会社と媒介契約を結んで一般の買い手を探してもらう「仲介」のほか、直接売却する「買取」といった方法もあります。
買取のメリットは、買い手を探す必要がないため、仲介より売却までのスピードが早いことが挙げられます。
売却価格は仲介よりも低い傾向がありますが、登記の手間や解体の手間をかけたくない、という場合は、不動産会社に買取してもらえないか確認してみると良いでしょう。
一括査定サイトなど、無料依頼できる査定もあるので、売却できるか悩む前に、まずは気軽な気持ちで不動産会社に相談してみてください。
未登記建物を登記するためには
未登記建物は一般の買い手からは購入を避けられる場合もあるため、そのまま売却するのではなく、売り主自身で未登記状態を解消してから売り出した方がスムーズです。
先に紹介した「表題登記」「所有権保存登記」「相続登記」について、登記の手順や必要書類、登記にかかる費用の目安を紹介します。
申請方法は3種類
申請方法はそれぞれ共通して、次の3つがあります。
- 法務局窓口に申請書と必要書類を持参する
- 法務局に申請書と必要書類を書留郵送する
- オンラインで申請書を作成・提出し、添付書類を窓口持参か郵送する
登記に必要な添付書類
登記申請書は書面かオンラインで作成できます。
申請書にはそれぞれ、次の書類等の用意が必要です。
書類に個人番号(マイナンバー)の記載がないよう、ご注意ください。
表題登記の場合
- 建物図面
- 各階平面図
- 建築確認通知書(確認済証)および検査済証
- 申請者の住民票
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
登記を行う際、建物の所有者であることを示す書類(所有権証明情報)が2種類以上必要となります。
上記の「建築確認通知書および検査済証」以外にも、「工事完了引渡証明書及び業者の印鑑証明書」「工事請負契約書および工事代金の領収証」「固定資産税の納付証明書」「火災保険加入証明書」などが利用できます。
所有権保存登記の場合
- 所有者の住民票
- 登録免許税の支払い領収証書または収入印紙
- 登記事項証明書
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
相続登記の場合
- 被相続人の戸籍謄抄本や除籍謄抄本(出生から死亡までがわかるもの)
- 相続人全員の戸籍謄抄本
- 相続人全員の住民票
- 登録免許税の支払い領収証書または収入印紙
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
遺産分割協議をした場合は、実印を押した遺産分割協議書と、実印の印鑑証明書を各1通添付します。
登記費用の目安
登記を行うには、基本として「登録免許税」という税金を支払う必要があります。
また、専門家に手続きを依頼する場合は、報酬費用が発生します。
報酬額は依頼先や、建物の面積・構造などによって変動するため、下記はおおよその相場です。
表題登記の場合
表題登記には、登録免許税はかかりません。
土地家屋調査士に依頼した場合、8万〜15万円程度の費用がかかります。
所有権保存登記の場合
所有権保存登記には、登記したい建物の不動産評価額に税率(0.4%)を乗じた金額で算出した登録免許税がかかります。
不動産評価額は、市町村役場から通知される「固定資産課税明細書」で確認できます。
ただし、令和6年(2024年)3月31日までは、一定の条件を満たすと交付される「その住宅の所在する市町村等の証明書(住宅用家屋証明書)」の交付を受けて申請した場合、軽減税率(0.15%)が適用可能です。
司法書士への報酬は、2〜4万円程度かかります。
相続登記の場合
相続登記の登録免許税は、不動産評価額に税率(0.4% )を乗じた金額です。
司法書士に依頼した場合の報酬は、6万〜8万円程度となります。
未登記建物は登記をしてからの売却がおすすめ
未登記建物とは、登記簿に登記されていない、あるいは登記簿情報と現況が異なる建物のこと。
何らかの原因で「表題登記」や「所有権保存登記」をしておらず登記情報がない、登記があっても「相続登記」などで情報の変更をしていないといったケースがあります。
登記簿に登記がないと、住宅ローンを借りるための抵当権設定ができないので、ローンが組めません。
また、所有権移転登記を行えないこともあり、買い主のデメリットが大きいので売却しづらいといえます。
未登記のままでの売却は可能ですが、登記をする、建物を解体するなどして未登記状態を解消してから売却することをおすすめします。
未登記建物の売却に悩んだときは、ぜひ不動産会社にご相談ください。
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