こんにちは。佐賀市・久留米市で不動産売却をサポートするソロンの平川です。
不動産を所有する親や親族がいる方の中には、「家や土地の売却は相続前と相続後のどちらが良いのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、どちらにすべきか迷う方に向けて、相続前と相続後それぞれの不動産売却におけるメリット・デメリットを解説します。
売却に関わる税金の優遇措置や、注意点もあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
不動産売却時の税金からチェック!相続前・相続後でかかる税金は?
不動産を相続前に売却するか相続後に売却するかの違いは、簡単にいえば、不動産を「現金」として相続するか「不動産そのもの(現物)」で相続するかの違いです。
納めるべき税金の額が大きく異なる場合があるのが大きなポイントです。
現金と不動産そのものでは、財産としての評価方法に違いがあったり、利用できる節税対策(税負担軽減の特例)が異なったりするからです。
どちらのタイミングを選んでも、売却に関わり「譲渡所得税」と「相続税」の支払いが発生する可能性があります。
譲渡所得税とは、不動産の売却代金からかかった費用を差し引いた利益(譲渡所得)があった場合に支払う税金。
相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産を相続した際、取得財産の評価額をもとに課される税金です。
不動産の所有者本人(親や親族など)や相続人の売却の目的(売りたい理由)によっても、相続前と相続後を選ぶ判断基準となるでしょう。
しかし、どちらがより節税できるかという点も大きな判断のポイントといえます。
不動産を相続前に売却するメリット・デメリットとは?
まずは、不動産を相続前に売却する(現金で相続する)メリット・デメリットを確認していきましょう。
不動産を相続前に売却するメリット
不動産は現物財産。
「家を3人の相続人で分割してください」といわれても、そのままでは公平に分けるのは困難です。
その点、現金は公平に分けやすい財産といえます。
相続前に不動産を現金化することで、相続人が複数いる場合も遺産分割がスムーズに行え、親族間のトラブルを回避できるという点が大きなメリットです。
不動産を相続前に売却するデメリット
相続前に現金化した場合、不動産を現物で相続するより、納めるべき税額が多くなる可能性が高いです。
理由は、現金と不動産そのものでは、相続税課税評価額を算定する評価基準が異なるから。
不動産そのものを相続した場合、土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」が基準となります。
対して現金は、現金そのものが課税評価額となります。
土地や建物は、国や都道府県が毎年決める「地価公示価格等」をもとにした「時価」で評価されます。
路線価は地価公示価格等の8割ほど、固定資産税評価額は7割ほどを目安に評価されるため、現金で相続すると相続税評価額が高くなり、結果的に課税額の増加につながります。
相続前の売却時に利用できる税負担軽減の特例
親や親族など不動産の所有者が売却を行う場合は、次のような特例を利用して、譲渡所得税の負担を軽減することが可能です。
- マイホームを売ったときの特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
それぞれ定められた一定の要件を満たし、必要書類を添えて確定申告をすることで利用できます。
簡単に内容を確認していきましょう。
マイホームを売ったときの特例
居住用財産(マイホーム)を売却したとき、所有期間の長さに関わらず、譲渡所得から3,000万円まで控除できる特例です。
要件には、買い手との関係が親子や夫婦など特別な関係でないこと、特例を目的に入居した建物や別荘などではないことが挙げられます。
詳細は国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をご参照ください。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
所有期間が10年を超える居住用財産を売ったとき、課税される所得金額のうち6,000万円以下の部分について、所得税率が10%に軽減される特例です。
課税譲渡所得金額は、売却した年の1月1日時点で物件の所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」、5年以下ならば「短期譲渡所得」に分類されます。
譲渡所得税は、所得税と住民税を合算したもので、そのうち所得税にかかる税率は、長期譲渡所得は15%、短期譲渡所得では30%です。
特例利用時の6,000万円を超える部分は、本来の税率(15%)が適用となります。
ただし、平成25年(2013年)1月1日から令和19年(2037年)12月31日までは、復興特別所得税(所得税の2.1%相当額)も申告・納付が必要です。
詳細は国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」をご参照ください。
不動産を相続後に売却するメリット・デメリットとは?
続いて、不動産を相続後に売却する(不動産そのものを相続する)メリット・デメリットを解説します。
不動産を相続後に売却するメリット
相続前に売却するデメリットで説明した通り、不動産そのものを相続すると、相続税を安く抑えられるケースが多いです。
不動産の時価は、取引が成立した価格である実勢価格(市場価格)とも呼ばれます。
市場で売買取引される価格(現金)より、現物で相続したほうが土地の場合は約2割、建物では3割ほど低い評価額に対して課税されることになるため、結果的に節税につながります。
また、相続税には基礎控除がある点も、相続後に売却をするメリットです。
相続税の基礎控除は【3,000万円+相続人の数×600万円】となり、課税される遺産の総額を減らすことができる可能性が高くなります。
不動産を相続後に売却するデメリット
遺産を受け継ぐ相続人が複数いる場合に不動産そのものを相続すると、遺産分割協議の折り合いがなかなかつかず、売却まで時間がかかる可能性があります。
不動産を売却するにはまず、被相続人から相続人へ所有者変更を行う「相続登記」をする必要がありますが、誰がどの割合で相続するか合意に至ることが前提だからです。
また、共有財産として複数人が相続する場合は、全員の「売却しよう」という同意が必要なことも知っておきましょう。
相続人が1人でも「不動産は売らずにとっておきたい」と反対すれば、売却はできません。
そのほか、相続税の納税期限にも注意が必要です。
相続税の申告納税期限は、相続開始後から10カ月以内。
相続した不動産を相続税に充てようと考えている場合、この期限内に売却をする必要があります。
そのため、売り急いで安く売却をしてしまう可能性があるという点は気をつけたいところです。
相続後の売却の流れは「亡くなった親の家を売る方法は?流れや税金、高く売るポイント」にて解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
相続後の売却時に利用できる税負担軽減の特例
不動産を相続したあとに売却を行う場合は、次のような特例を利用して、譲渡所得税だけでなく、相続税の負担を軽減することも可能です。
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
定められた一定の要件を満たし、必要書類を添えて申告することで利用できます。
それぞれ簡単に説明します。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
相続前に被相続人に居住用に使われていた空き家を売却したとき、譲渡所得から最高3,000万円控除できる特例です。
適用要件には、相続開始後、3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するという期限が含まれます。
次に紹介する「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と併用できない点にはご注意を。
詳細は国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を参照してください。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続税額のうち一定の金額を、売却した不動産の「取得費」に加算できる特例です。
相続不動産を、相続開始後の翌日から相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却(譲渡)するなど条件を満たすことで利用できます。
取得費とは、売却物件を購入したり、建築したりする際にかかった費用です。
譲渡所得税を算出する金額(課税譲渡所得金額)は、売却代金から取得費と、売却にかかった費用「譲渡費用」を差し引いて計算します。
特例により取得費が増えて課税される譲渡所得が減るため、節税につながります。
詳細は国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」をご参照ください。
相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
相続の直前まで、被相続人(または被相続人と生計を共にしていた親族)が事業や居住用に使っていた土地を相続した場合、一定面積の部分について、相続税の課税価額を一定の割合で減額する特例です。
宅地であれば、330㎡までの部分について評価額の80%が減額されます。
適用要件は、誰が取得したかによって異なり、被相続人の配偶者が相続した場合は無条件で適用可能です。
それ以外の人が取得した場合は、相続開始時から相続税の申告期限までその宅地を所有している、という条件が含まれるため、売却代金を相続税の納税に充てたい場合は、ほかの特例を利用すると良いでしょう。
詳細は国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」をご参照ください。
不動産売却を相続前と相続後で悩んだら?
不動産売却を相続前と相続後のどちらのタイミングで行うか悩んだ場合は、次の2つの視点で検討すると良いでしょう。
- 節税にはどちらがよりお得か
- どちらが状況に合っているか
それぞれ解説します。
節税には相続後の売却がお得
1つ目の観点からいえば、不動産そのものを相続するほうが、相続税課税評価額が下がるケースが多いため、相続後の売却が良いといえます。
ただし、相続後の売却のデメリットのところでもご説明しましたが、売却資金を相続税の納税に充てたい場合は、申告・納税期限(相続開始後10カ月以内)に間に合うように売却を進める必要があります。
「売り急ぐあまり無理な価格交渉に応じて値を下げてしまった」とならないよう、余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
また、先にお伝えした通り、納税期限が特例の適用要件とかみ合わない場合もあるので、特例の条件を国税庁のホームページで確認しておくことをおすすめします。
相続税の申告・納税期限は、「不動産相続の手続き期限は?期限を過ぎた場合のデメリットや流れも」にて詳しく解説していますので、ぜひあわせて参考にしてください。
所有者や相続人の状況にあわせてタイミングを選ぼう
2つ目は、売却を取り巻く環境を考慮した上で、どちらが都合が良いかという観点です。
例えば、相続人が複数いて「遺産分割協議がモメそうだ」と想定できるなら、相続前に現金化しておくほうがトラブル回避に向いています。
また、家族と同居するから空き家となる実家は売って生活資金にしたい、老人ホームに入居する資金にしたいと希望する場合も、先に売却して現金化するのが良いでしょう。
いずれにしても、所有者本人の希望を優先することが大切。
所有者が生前に売却したくない場合は、相続後の売却を選びましょう。
不動産売却は相続前より相続後が節税の効果は高い
不動産売却を相続前に行う場合は、現金として遺産を相続できるため、公平な分割がしやすく、売却手続きもスムーズです。
ただし、現金は相続財産として評価額が高くなり、結果として支払う相続税の負担が大きくなる可能性があります。
不動産売却を相続後に行う場合は、遺産分割がある場合は手間はかかりますが、税負担が軽くなるケースが多いため、お得といえます。
ただし、どちらのタイミングにするかは、所有者の意向や相続人の状況に応じて判断しましょう。
税負担軽減の特例には、いつまでに売却するかなど、期限を含む適用要件があります。
売却を取り巻く環境を考慮した上で、節税対策も上手に取り入れてみてください。
不動産の売却に悩んだときは、ぜひ不動産会社にご相談ください。
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